僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

生まれ変わったらの話

鳥は鳥だから空を飛べるのであって、人間がどれだけ願っても、自力で空を飛ぶことはできない。地を飛び立つことはできない。どうしても自力で空を飛びたいなら、鳥になるしかない。
人間ができないことをやりたいならば、できる生き物になるしかない。

乗り換えまで残り2駅のところで電車が止まる。ここの駅がこの辺では1番大きいために、ほとんどの人が乗り換えやらで降りる。俺と友一、泰一はさらに奥まで行き、そこで乗り換えて4.5駅ほど進んだ田んぼに囲まれた街へ通学している。そして俺たち3人と同じボックス席に腰掛ける男子も、制服から判断するにここから1つ先の駅が最寄りだ。
見ない顔だな、と思いつつもあまりジロジロ見ると通報され兼ねないので窓の外を見る。普通に考えれば他校の制服なのだからほぼ見ない顔である。ただ少なくとも普段乗る電車では見たことがない。そして俺たちとは比べ物にならない頭の良い学校の制服だ。

外を見る俺に友一が話しかけてくる。

友一「耕平はさ、生まれ変わったら何になりたい?」

唐突な質問だが、むしろ唐突な質問の方が日常なために、こんな展開は慣れっこである。すぐに答えを用意する。

耕平「木かな」

友一「木!?」

耕平「うん。突っ立ってるだけで楽そうやん」

友一「一生座れないよ?」

耕平「・・・確かに」

声のボリュームを気にしつつ、周りの様子を伺うが特に気にしている人はいないようだ。制服を着ているために、公共の場であまり変な話はしたくないが、幸いにも同じ席に座る男子も気にしてない様子だ。

友一「泰一は?」

俺と同様に窓側に座り外を見ていた泰一にも同じ質問をする。うーん、と少し考えた後、外を眺めながら答える。

泰一「ラスベガス・・・かな」

耕平「いやなにそれ」

友一「国だよ!」

耕平「そういう意味じゃねーししかも国じゃねーしなんなんだよお前ら。どっちにしろ魂宿ってねーだろ」

泰一「木も宿ってないでしょ」

耕平「・・・確かに」

良く考えれば、俺の生まれ変わりたいものもおかしいな話だったのかもしれない。次から気をつけよう、そう意気込むと、友一が再び口を開く。今度は自分が生まれ変わりたいものを言うのだろうか。

友一「君は生まれ変わったら何になりたい?」

男子「えっ?僕ですか?」

友一「うん!」

うん!じゃねーよ。なんてナンパの仕方だよ。急に話を振られ、当たり前だが困惑の表情を浮かべる。

 

耕平「困ってるだろ。巻き込むな」

 

男子「僕は鳥ですかね」

耕平「困ってたんじゃなくて悩んでたのかよ」

泰一「鳥といっても色々いる」

男子「トンビとか。空を飛んでみたいです」

泰一「ふんっ」

耕平「普通に話してることにツッコミ入れようとしたのに鼻で笑うな」

初めましての挨拶も抜きに、生まれ変わったら何になりたいかという話をする。
普段から気さくに誰にでも話しかける友一はさておき、(普通ならさておく場合ではないが、)もはや普通に話すどころか、鼻で笑う泰一。いつもなら考えられないが、何かあったのだろうか。
そんな2人の会話が終わるのを待ち、友一が口を開く。

友一「俺はね、生まれ変わってもまた俺に生まれたいと思ってる!」

聞いてもいないことを語り始める。

友一「そしてまた、みんなと出会いたいと思ってる」

耕平「ったく、お前ってやつは。友一らしいな」

友一「生まれ変わっても、みんなでまたバカなことやりたいじゃん」

泰一「バカやってるのは友一だけだがな」

照れながら泰一が言う。無邪気な笑顔で話す友一はまるで子供が夢を語る姿のようだ。考えてみれば木に生まれ変わるより、よっぽど楽しい。
でも、こんなことを面と向かって言えるのはなかなかできないことだ。友一はそういった面では優れている。

友一「もちろん、泰一や耕平だけじゃないよ!」

りょうがや池田、翔平も含まれているのだろう。みんなそれを聞いてなんて言うだろうか。感動するりょうがと、ただニコニコしている翔平、本気で嫌がりそうな池田が想像できる。

友一「君ともだよ!」

どうやらりょうがたちは含まれていないようで、俺と泰一と今一緒に座っている男子が対象のようだ。出会って数分の人に生まれ変わっても出会いたいだなんてこと、よく言えたものだ。ましてや相手は男。一目惚れした人を口説くような小っ恥ずかしい台詞を電車の中で初対面の相手に言う。何度も言うが相手は男。

 

男子「友一さん・・・!」

 

耕平「いやお前も感動するほど友一と絆深まってねーだろ!」

一通りツッコミを入れる作業を終える。

泰一「ふんっ、飛んだ茶番だったぜ」

再び鼻で笑い、立ち上がりドアの前に立つ。ほぼ同時に次の駅に着き、電車が停車をする。泰一のところへ、付いていく3人。ドアが開き、電車から降りて歩き始める泰一。振り向きながら言う。

泰一「少年よ。また、何処かでな・・・」

何に影響されたのか、朝からキレッキレの泰一は男子に挨拶を交わし再び歩き始める。俺はそんな泰一を見て、かける言葉が1つしか思いつかなかった。

耕平「俺たち降りる駅は次だよ」

急いで戻ってくる泰一、爆笑している友一、泰一とすれ違いに会釈をしながら電車を降りる男子、そんな様子を見て、俺は生まれ変わったらまた俺に生まれたいと思った。