僕らの現実非日常?

こーへえと仲間たちの日常

金の心配はいらねえよ

 

蒸し暑い9月の話。

 

給料日前だった俺の財布はとても寂しく、大人しくDVD鑑賞で夜更かしをした次の日である。

まだ大学は夏休みで、暇な時間が続いていた。

 

 

LINEの通知で目が覚める。

 

どうやら池田は珍しく仕事が休みらしく、大学生のりょうがと江ノ島に昼飯を食べに行こう、と話を進めていた。

 

携帯を眺めながら、俺が巻き込まれていないことにホッとしたのもつかの間、チャイムが鳴る。

 

 

りょうが「行くぞ」

 

俗に言う拉致だ。俺が子犬みたいに誰にでも着いていくと思っているのかこいつは。それに俺が得をする話は今のところないぞ。

 

車へ乗り込む。いや行くんかい。

 

りょうが曰く東京住みの池田は現地に直行らしい。

 

 

りょうが「やべえ!思ったよりガソリンがない!」

 

 

耕平「入れればええやん」

 

 

りょうが「バカか!金ねえよ!」

 

 

耕平「お前それで飯行くなんてすげえ度胸だな!てかバカはお前だろどう考えても」

 

 

りょうが「お前出せよ」

 

 

耕平「6000円しかないよ」

 

 

りょうが「おう」

 

 

ガソリンスタンドへ寄り、りょうがに5000円札を渡しガソリンを補給。助手席で炭酸を我慢して、冷たい水を飲みながら、まだ眠い目を擦る。

 

 

 

運転席にりょうがが戻る。

 

ガソリンのメーターはほぼマックスになった。

 

 

耕平「いくら入れたの?」

 

 

りょうが「5000円に決まってんだろ」

 

 

耕平「バカか!6000円しかないって言っただろ!飯代考えろよ!」

 

 

りょうが「は?飯代?最初から金ないって言ってるだろ」

 

 

耕平「ちげーよ俺のだよ。飯食わずに眺めてろとでも言うのか」

 

 

りょうが「いいじゃん。一緒に眺めてようぜ」

 

 

なんで池田の食事するところを見に江ノ島まで足を運ぶんだよ。そんなレアな絵じゃねーわ。

 

 

りょうが「とにかく池田待たせてるから急ぐぞ!飯代のことは食い終わってから考えよう」

 

どういう順番だよ。皿洗いでもする気かこいつは。

 

 

現地へ到着する。池田と合流し、適当な店へ入る。

 

メニューを一通り見て、池田が店員を呼ぶ。

 

 

店員「ご注文ですか?」

 

 

りょうが「はい。このアジのたたき定食1つ」

 

 

耕平「生ビール大ジョッキとカレイの煮付け、刺身盛り合わせで」

 

 

池田「生と串盛り」

 

 

店員「かしこまりました」

 

 

いやいや待てよ。金どうするんだよ。

 

てか江ノ島来て串盛りってなんだよ。なんで江ノ島チョイスしたんだよ。

 

 

りょうが「池田、お前に言わなきゃいけないことがある」

 

 

池田「なんだ」

 

 

りょうが「実は金が無い」

 

 

池田「タイミングおかしいだろw」

 

 

耕平「ほんとだよ。俺もガソリン満タンにしたら財布すっからかんになった」

 

 

池田「お前もかよw大ジョッキ頼んでるじゃねーかww」

 

 

耕平「しかしだな、俺は予定すら聞かれてない状態で、寝癖もボーボー、服装もパジャマで来たんだぞ」

 

 

池田「しかもガソリン代払わされたとか笑える話だな」

 

 

りょうが「全くだよな。メシウマだわ」

 

 

こいつ何がメシウマだよ上手いタイミングに言いやがって。

 

 

池田「まぁ別にいいけど。最初から奢る気だったし」

 

 

これが漢だ。同い年でありながらすでに職に付き、毎日朝から夜遅くまで働く料理人。

 

店員がビールを持ってくると、秒で散らかった俺らのテーブルの上にスペースを作り、ビールを置きやすいようにアシストする。客という立場でありながらも店員に対して謙虚に接する。同い年とは思えない。

 

 

 

そしてビールを置いた店員に向かって話しかける。

焦らさず、丁寧に、そして謙虚に。 

 

 

りょうが「アワビの刺身追加で」

 

 

耕平「あとサザエのつぼ焼きもお願いします」

 

 

池田「おい!!!」

 

 

 

 

池田が会計を済ませ、店を出る。

 

満足そうにお腹を擦るりょうが、財布への負担は大きかったがそれでも楽しそうな池田。

 

俺はそんな彼らの表情を見て1つ疑問が浮かんだ。

 

 

 

ガソリン代と駐車場代を払った俺が1番損しているのではないだろうか。