僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

疑うことの簡単さ、信じることの難しさ

 

授業が終わり、電車に乗る。ちょうどボックス席が空いていてそこに腰を下ろす。窓側の特等席をゲットしたのは俺と友一。通路側は池田とりょうが。残念ながら座れなかった泰一は、池田にカバンを渡し立っている。

 

池田「なぁそう言えば今日さ」

いつものように他愛のない会話をする。

 

池田「隣のクラスの女子に数学の教科書貸したんだけどさ」

羨ましそうな顔をする泰一に池田は気づかず、そのまま話を続ける。

 

池田「その次の時間俺も数学で、教科書開いたらチ◯コの落書きしてあったんだよね」

 

友一「それはすごい展開だね」

 

りょうが「まぁ年頃の女の子だし仕方ないだろ」

 

池田「バカかちげーよ。俺はお前ら3人を疑っているんだよ」

そりゃそうだ。女の子が男に借りた教科書にチ◯コの落書きをするわけがない。あり得るとするならば、女の子同士の落書きだろう。俺は頷く。

 

耕平「そうだな。池田の考えは妥当だ。犯人を探そう」

 

池田「そうだろ?やるとするならお前ら3人しかいないってわけだ」

 

耕平「そうだ。お前ら3人が疑われるのは仕方ない」

 

池田「おめーもだよ」

 

耕平「俺も入ってたー。やっぱり、俺も入ってたー」

こうして犯人探しが始まる。

 

りょうが「いいか。絶対俺はやっていない。そんな幼稚なことやらん」

 

池田「いや、お前幼稚だろ」

池田の発言にわかってないな、と返し語り始める。

 

りょうが、エピソード(りょうが視点)

つい先日、椅子に座ろうとする人の椅子をずらそうとしているやつがいた。たまにいるだろ?座る瞬間に椅子を引くやつ。あれだ。俺はそいつに向かって、止めろ怪我したらどうするんだ。そう言ったんだ。確かにやっている本人は楽しいかもしれない。でも、それで怪我したら大変だし、怪我させたやつだって遊びだったじゃ済まされないんだ。

 

池田「なるほどな。むしろ止める側、そう言いたいんだな」

 

耕平「ちなみに、椅子ずらそうとしたやつは誰だ?」

 

りょうが「友一だ」

 

耕平「お前かよw」

 

りょうが「ますます怪しいだろ?」

 

友一「ちょっとずるいよそうやって人を陥(おとしい)れるの!」

 

りょうが「陥れる?俺は自分の行動を言ったまでだ」

確かにりょうがは自分の大人びた?行動を言っただけだ。俺の質問に対して答えただけで、決して犯人を言うつもりはなかっただろう。

 

泰一「俺は、りょうがは犯人ではないと思う」

りょうがの味方についた泰一。彼は続けて語り始める。

 

泰一、エピソード(泰一視点)

少し前、下校のタイミングで雨が降り始めた。傘を持ってきたのだが何者かに盗られてしまって、持っていなかった。だから俺は駅まで走ろうかと思った。すると後ろからりょうがが、俺の名を呼び、傘に入れてくれたのだ。そんな優しいりょうがが、人から借りた教科書に、落書きをするとは考えにくい。

 

池田「根は友達思いだもんな。それは俺も知ってる」

 

耕平「それより傘見つかったの?また雨降ったら困るでしょ」

 

泰一「ああ。友一が持っていた」

 

耕平「またお前かよw」

 

池田「正直、俺も友一が1番怪しいと思っている」

もはやここまで攻め込まれては相当のことを言わないと疑いは晴れない。もう俺にすら視線がなくなるほどに、りょうがと泰一の証言は、友一を追い込む材料にしては十分すぎた。

 

池田「だが、友一に発言の場を与えないのは不公平だ。言いたいことがあるなら言ってみろ」

友一は顎に手を当て、考える仕草を取る。そして、ゆっくりと話し始める。

 

友一「小学生の時の話になるけど、いいかな」

 

池田「まぁいいだろう。話してみろ」

 

友一は再び語りだす。

 

友一、エピソード(友一視点)

あと少しで学校が終わるという頃、一人の女の子が泣いていた。理由を聞くと、どうやら机の脚に鼻くそが付いていたという。泣いている女の子の友達が俺を指差して、友一くんでしょ!と言った。それに続き、他の女の子も俺を指差し、謝れ、と言ってきたんだ。証拠もないのに疑われたことが、俺は凄くショックだった。

 

池田「なるほどな。そもそも証拠もないのに疑うな。そう言いたいんだな」

 

友一「うん・・・」

 神妙な顔で頷く。友一の話に一瞬の静寂を生んだ。確かに、友達同士信じ合えないのは、どうなのだろうか・・・。やったならやった。やってないならやってない。それ以上でも以下でもない。やってないと言うならそれはやってない。友達としてそれ以上追求する必要はない。

 

池田「そうだな・・・。俺が悪かったのかもしれない」

大したことではないが、池田は身を引く。1番大人びた行動を取る。疑うのは簡単だが、信じることは難しい。その難しいことを、池田はやったのだ。

 

耕平「で、ちなみにその鼻くその犯人は誰だったの?」

 

友一「俺だよ!」

 

耕平「結局お前かよwww」