僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

皆勤賞を目指した少年

皆勤賞。

運も実力の内という言葉があるが、この言葉はふさわしくない称号、皆勤賞。

並大抵の努力では得ることのできない称号、皆勤賞。 

1回のミスも許されない称号、皆勤賞。

 

そんな称号、皆勤賞を目指している一人の少年がいた。

それはもうお馴染みの、池田である。彼はどんな時でも遅刻、早退、欠席をせず学校へ行った。台風で警報が解除された日も、前日、朝まで遊んだ日も・・・。自分の口から俺は皆勤賞を目指している。そう言い、体にムチを打って生活していた。他人には優しく、自分には厳しく過ごしていた。

 

高校3年の11月。

登校後、池田に借りていた本を返すべく、彼の教室に入る。するとそこには明らかに具合が悪そうな池田がいた。

 

耕平「どうした」

 

池田「風邪引いた」

聞いといてあれだが、見ればわかる。そして具合が悪いのにも関わらず登校してきている理由もわかる。辛そうにしている友達を見るのも中々心が痛む。

 

耕平「薬飲んだか?」

 

池田「飲んだけど全然効かねえ・・・」

学校へ来さえすれば、寝てても平気だ。薬に関しての知識は皆無だが、効き目抜群の薬ほど副作用が強いイメージがある。しかし例えその副作用で眠くなってしまっても具合が良くなればいいだろう。俺も池田の皆勤賞を応援しているし、先生たちも池田の皆勤賞は応援しているはずだ。普段から池田は真面目で、先生たちからも厚い信頼を置かれている。仮に池田が授業中に寝てても、誰も文句言わないはずだ。それくらいの信頼を置かれている。

ならばやるべきことはもう決まっている。

 

耕平「お前はここで待ってろ。俺がより効果のある薬を探してきてやる」

 

池田「おう。頼む」

 

 

こうして、俺の薬を探す旅は始まった。

 

俺は気合を入れ、自分のクラスへ戻る。ちなみに池田は3組、友一が2組、あとは全員1組だ。手っ取り早く済ませるため、1番期待のできる翔平に声をかけるが、即答でないと答えられる。しかし翔平も心配なのか、俺に付いて歩く。

次は泰一の元へ。先に言っておくと、もちろん他の人(まともな人)から貰うことも視野に入れている。しかし薬と言えど、タダで手に入る物ではない。みんなお金を出して買っている。それを譲ってもらうならば、多少の配慮が必要だ。池田の命が掛かっているこの状況でも図々しい態度はどうも取れない。

 

耕平「池田が風邪引いてるんだが、薬持ってない?」

待ってて、と言いカバンを探る。

 

泰一「ごめん、正露丸しかない」

ダメだ。これでは風邪は良くならない。池田の体調を見る限り恐らく熱もある。しかし正露丸ではどうにもならない。

 

翔平「いや、もしもだ。もしも眠気とともに腹痛が来たらどうする。睡眠が1番の治療と言われている中、それを邪魔する腹痛。その時、正露丸の出番ではないか?これは念のためにもらっておいたほうが良い」

 

耕平「・・・何言ってんだこいつ」

りょうがか友一が言っているのならぶん殴っていた。池田が死にそうだと言うのに、何冗談言ってるんだ、と。しかし翔平の目は真面目も真面目、おふざけなしの真っ直ぐな意見だ。

 

耕平「・・・わかった。一応、もらっておこう・・・」

とにかく急がなければ池田が死んでしまう。ツッコミは後にするとして泰一から正露丸をもらう。次にりょうがの元へ。

 

耕平「池田が風邪を引いているんだが、薬持ってない?」

 

りょうが「薬?あるわけないじゃん」

あるわけない?もしも学校着いてから具合が悪くなったらどうするんだ。

 

りょうが「具合が悪くなったらそりゃ帰るわ」

そうだ。こいつは根本的に池田と違う生き物だ。具合が悪ければ帰る。具合が悪くなくても帰る。

よくこんなやつが進学クラスに入れたものだ。

 

翔平「ちなみにだけど、耕平は薬ないの?」

翔平に問われ、答えにくいが正直に答える。

 

耕平「俺、具合悪くなったら帰るからな・・・」

よくこんなやつが進学クラスに入れたものだ。

りょうがに用はなくなった。薬がないなら仕方がない。次にいこう。友一のいる2組へ足を運ぶ。

 

耕平「池田が風邪引いてるんだが、薬持ってない?」

友一が持ってるわけないだろ、と思うかもしれない。しかし友一の両親、そう両親はしっかり者である。可愛い息子のために薬を持たせているかもしれない。友一も素直であるから、持たされたら持ったままだろう。

 

友一「薬かー。あるにはあるよ!」

思わず翔平と目を合わせる。現状、正露丸しか戦利品がないのは俺としても恥ずかしい。

 

翔平「あるにはある。果たしてその薬は?」

 

友一「ちょっと待ってね」

カバンをゴソゴソ探りながら薬の説明を始める。

 

友一「結構万能な薬でね。効果一覧?みたいなところにたくさん病名が書いてあった!」

 

翔平「なるほどな。そりゃ期待できそうだ」

 

友一「でしょ?まぁ最近は滅多に使わないけどね!はいこれ!」

 

そう言いながら正露丸を取り出す。

 

耕平「お前はバカか!?あ!?風邪引いて正露丸飲むのか!?あ!?」

泰一の時とは出し方が違う。泰一はこれしかない、そう言って出したが、友一は期待させておいてからのこれだ。眉毛を釣り上げ友一に顔を近づける。池田が死にそうだと言うのにこのふざけた冗談。否、友一も同様顔を近づけ言う。

 

友一「何言ってんの!?風邪引いたら早退するに決まってるじゃん!!」

 

耕平「クソ!!何も言えねえよ!!」

 

翔平「・・・」

こうして俺と翔平は正露丸を持ち、一旦池田に報告しに向かう。

 

耕平「ってことでこれしかなかったんだ」

 

池田「ああ、良いってありがとな。保健室で薬もらってきた。どうせお前ら持ってないだろうって思ってたしなw」

無力だ。実に無力な自分が情けない。翔平と肩を落とし教室へ戻る。

 

その後は難なく過ごせたみたいで、帰りにはすっかり元気になっていた。どうやらぐっすり眠れたらしく、薬も効いたようだ。一時的なものかもしれないが、それは俺がバイトを終え、帰宅して届いたメールからも元気が伝わってきた。

 

池田「スカイプしながらピグの大富豪でもやろうぜ」

帰宅して仮眠を取ったらもう完全に元気になったようだ。疲れていたが、そんな元気がある友達の相手をしないのは友達失格だ。池田とスカイプを繋げる。他愛もない話で盛り上がり、午前4時頃お開きとなった。

 

午前7時。こんな生活してるから俺は寝坊をするのだ。最初の1本を逃してしまうと遅刻が確定するがギリギリ電車に間に合う。逆に言うと、この1本さえ乗れてしまえば遅刻は免れる。

電車に揺られていると池田からメールが来る。

 

池田「起きれたか?昨日は遅くまで付き合わせて悪かったな」

皆勤賞。遅刻、早退、欠席、全て1回もないものに与えられる称号。レジェンドだ。入学当初からそれを目指していると言っていた池田。にも関わらず、俺たちの夜の馬鹿騒ぎにも付き合ってくれる。誘えば必ずと言っていいほど来てくれる。俺らの付き合いでも、池田は皆勤賞だ。

 

耕平「まったくだぜ。ギリギリ間に合ったけどな」

もう3年の11月だ。あと少しで池田は皆勤賞。そうだな、俺たちらしく池田の皆勤賞は池田のおごりで焼肉でもするかな。

 

池田からメールが来る。

 

池田「ちなみにだが、俺は昨日の夜更かしで寝坊して遅刻が確定しました」