僕らの現実非日常?

こーへえと仲間たちの日常

友達のために役に立ちたい。純粋な男

 

川のせせらぎ、よりも轟音と言った方のが良いかもしれない。どちらにしても水が流れる音だ。真夏の日差しを浴びながらも、そんな水の音を聞いていると幾分か涼しく感じるのは気のせいだろうか。
網を持って魚を探すりょうがを眺めていると、トイレに行った友一と池田がいつも以上に凄まじい顔で走ってくる。一体何があったのだろうか。

友一「大変だ!!!!」

息を切らす2人を見て、一緒にトイレに行った泰一がいないことに気づく。ただ事ではない、そう感じ取ったのかりょうがもこちらへ向かってくる。

りょうが「どうした」

友一「大変なんだ!泰一が!泰一が大変なんだ!」

息を切らしながらとにかく泰一が大変なんだとしか言わない友一。本当に大変らしい。しかしさすが友一。人にその大変さを伝える能力が皆無である。そんなこんなで、状況が飲み込めない俺とりょうが。友一と同じく、息を切らしている池田に話をしてもらうしかない。

耕平「池田補足してくれ」

池田は呼吸を整えながら、パッチリと開いた目を細くした

耕平「アホか補足だ補足。細くじゃねーよ」

池田「詳しくは現地に向かいながら話す。とにかく付いてきてくれ」

一体何がどうなっているのか不明なまま、俺たちはトイレへ急ぐ。走りながら話すとの約束であったが、どう見てもそんな余裕がない池田。自分の体力を多く見積もっていたようで今にも死にそうな顔をしている。ちなみに就職した今でもそんな顔をよく見る。社畜だからな。

トイレへ到着し、個室に入っている泰一に直接聞く。

りょうが「どうした。紙がないのか?」

俺も思っていたことをりょうがが質問する。

泰一「いいや、違う」

この状況で紙がない以外何があるんだ。りょうがと顔を合わせると同時に泰一が続ける。

泰一「トイレットペーパーがないんだ」

同じじゃねーか。いや、紙とトイレットペーパーは確かに違うな。しかし今この状況での紙はトイレットペーパーを指すことくらいわかるだろ。

友一「そうだったの!?ほんとに大変じゃん!!」

おいちょっと待て。今知ったのかよ。じゃあさっきまで大変だって騒いでた理由はなんだよ。

りょうが「わかった。今助けてやる」

そう言うと、ありとあらゆる関節をぐるぐる回し、助走をつけ始める。

りょうが「っしゃあ!行くぞ!!」

耕平「ストップ」

りょうが「んだよ!」

んだよじゃねーよ。なんで扉ぶち破ろうとしてんだよ。紙が、トイレットペーパーがないのが困ってる理由だろ。
ようやく呼吸が整いきった池田が言う。この中で1番頭が切れるし、なにより常識的な男だ。何が起きたのかわからず大変だと騒ぐ男や、誰にも見られたくないであろうシーンに突入するバカとは違う。きっと的確な助言をするに違いない。

池田「っふー、よし、呼吸、整いました!」

知るか。もう自分のことで必死じゃねーか。1人だけ別次元の戦いしてるぞ。さて、どうしたものか。周りを見るとトイレの個室は1つだけである。予備のトイレットペーパーを探すも、見当たらないそれならば方法は1つしかない。

耕平「女子トイレから持ってくるしかないな」
こんなところのトイレに人はいないだろう。さっさと紙、トイレットペーパーを持って行ってスッキリさせてやろう。

 

池田「おい、正気か」

 

耕平「誰もいないだろ。平気だ」

女子トイレから紙、トイレットペーパーを持ってくることが決まり、早速向かおうとする俺にりょうがが言う。

 

りょうが「ちょっと待て」

 

耕平「どうした?」

 

りょうが「泰一にとって紙がなかったことは災難だとは思う。でもな、これから先、一人でこういう状況を突破しなければならない時が来るかもしれない」

続けて言う。

 

りょうが「今はこうして助けを求めることができるシチュエーションである。だが、だからこそ今、一人で突破するべきなんじゃないのか?」

 

確かにりょうがの言うとおり、今後は災難も一人で突破しなければならない時が来るかもしれない。恐らくりょうがは今、助けを求めることができる人がいるこの状況で、できるところまでは自分でなんとかしろ。無理なら手伝う。そう言いたいのだろう。

 

池田「んなことで時間使えるかよ。さっさと終わらせようぜ」

池田は武器が目の前にあるのにそれを使わないのはもったいない。そう考える男だ。

 

りょうが「お前は甘すぎるんだ」

 

池田「なんだよ。何が言いたいんだよ」

 

池田の質問を待ってたかのように、池田に人差し指を向け、言い放つ。

 

りょうが「自分で自分のケツ拭けって言いたいんだよ!以上!」

そう言うと満足したのか、さっさと取ってこようぜ。と言う。やかましい。言いたかっただけなんだな。

 

耕平「じゃあ行ってくるぞ」

歩き出す俺の肩を友一が掴み、俺が行く。そう言った。

 

友一「俺は、これくらいしかできないから。やらせて!」

 

トイレの出口で俺たちに背を向けてそう語る。友一は泰一の役に立つことがしたい。そう思っているのだろう。俺とりょうがを呼びに来た時も真剣な表情だった。なんで困っているのかもわからず、ただただ困っている、そう聞いただけであそこまで真剣な表情になれるほど友達思いで純粋なやつなんだ

 

わかった行って来い。

 

友一は俺たちに顔を向け言う。

 

友一「行ってきます!どぅへへ」

 

不純な笑みを浮かべながら彼は喜んで女子トイレに入っていった。