僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

マラソン大会前編

 

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1年に1回行われる学校行事の中で、もっとも人気のないもの、それはマラソン大会。女子は5kmそして男子は10kmを走る。総勢200名を超える生徒がスタート地点に立つ。前年度10位以内に入った人が先頭に立ち、続いて2年生、そして1年生の順に並ぶ。女子は先に終わっており、次は俺ら男子の番である。

音楽を聴きながらマイペースで走る長距離は好きだが、こういった順位を争ったり、体育の成績に関わる長距離は大嫌いだ。ただ、嫌い=不得意というわけではない。もしかしたら、長距離は得意なのかもしれない。俺は苦手だと思っているが・・・。

スタート5分前になると、前年度俺よりも早かった3人の目つきが変わる。2人はバスケ部、1人は中学の時に県大会で優秀な成績を収めたらしい。軽く体を動かし、戦闘態勢に入っている。俺も何かしないと格好がつかないと思い、目薬を指した。それにしても寒い。早くスタートしてくれないとこんな真冬に半袖なんて凍え死んでしまう。

 

泰一「こーちゃん」

 

後ろから圧倒的な敗者が語りかけてくる。

 

泰一「今日は負けないぞ」

 

耕平「おう。精々頑張ってくれ」

 

宣戦布告。相変わらず変なやつだ。泰一なんて眼中にないっつーの。

 

友一「耕平!」

 

次にテストと同様に、前年度ほぼ最下位だった友一と、長距離なんてクールじゃないぜ、とスカしてたりょうがが後ろから人をかき分けて前に来た。

 

友一「ちょっと話がある!」

 

りょうが「もう時間ねえから、とりあえずスタートしたら合流するぞ」

 

先生に定位置に戻るよう注意され彼らは下がる。どうせろくでもない話だろ。とは言いつつも、一旦合流することにした。

 

スタートの合図が鳴り響き、トップを狙う生徒は全力に近いスピードで走り出す。対して俺はスピードを緩める。王者の貫禄だ。まず貫禄なんてないか。それ以前に王者でもないが。スピードを緩めると何やら3人で楽しそうに話しながら走っている。

 

耕平「話ってなんだ」

 

池田「まぁとりあえずこれ飲めよ」

 

池田から暖かいおーいお茶を貰う。なぜだ。マラソン中だぞ。

 

りょうが「俺らのクラスにWってやついるじゃん?あいつ地元ここなんだよ」

 

耕平「知ってるけど」

 

W視点で言うと、地元の高校に通ってるってことだ。

 

りょうが「でさ、コースについて聞いたら1つ良い情報が手に入ってな」

 

耕平「おい待てよ!」

 

俺は目を細めて、りょうがが言おうとしていることを止めた。俺と同様にりょうがも負けず嫌いである。

 

耕平「いいか、いくらなんでも近道なんて言語道断だ。男なら正々堂々勝負だろ」

 

俺は対等に戦って勝ちたい。そう思っている。しかしりょうがはどんな手を使ってでも勝つという男だ。ましてやこの長距離走、りょうがにとっては不得意な分野である。俺に、お前は甘い、いつもそう言う男だ。それに、折り返し地点ではランダムな色で水性ペンが用意されている。それを手に書くことにより、折り返しの証明になるため、下手な不正は通用しない。

 

りょうが「・・・」

 

俺の目をじっと見つめる。俺も目をそらさない。これは友としても止めるべきだ。

 

りょうが「いや、違うんだ」

 

いつもの調子で言う。どうやら近道ではないようだ。少し警戒しながら、続きを伺う。友一はりょうがに事を任せているようでお茶を飲んでいる。それにしても友一はなぜリュックを背負っているんだろうか。先生に注意されなかったのだろうが。

 

池田「りょうがじゃ要領悪いだろうから俺が説明する。まずりょうががWから聞いた話は昨日だ」

 

耕平「おう」

 

池田「W曰く、この10kmマラソンの折り返し地点の手前に公園があるらしい」

 

りょうが「その公園は川沿いですごく良いところなんだってさ」

 

池田の説明にりょうがが付け加える。折り返し地点を通過すると、道路を渡って左側通行、川沿いを走ることになる。つまり折り返し地点を通過した人の目にしか入らないため、折り返す前に道路を渡って行けば目立ちにくいとのこと。道路を渡る行為自体が目立つが。

 

池田「それを聞いてりょうがは閃き、準備に取り掛かることにした」

 

果たして何を閃いたのか。

 

りょうが「それでまずは俺たちの母親でトップクラスのおにぎりを作る友一の母親におにぎりを作って貰うことにした」

 

友一「このリュックに入ってるよ!」

 

耕平「お、おう・・・」

 

池田「もう分かるだろ?」

 

はい。分かります。その公園でおにぎりを食べようってことね。

 

耕平「バカかお前ら!」

 

学校行事、ましてや体育の成績にも反映される、ましてや指定校狙いだから内申点がほしい、こんな状況に置かれている俺(りょうがもなんだがな)が呑気に自然豊かな公園でランチなんてしてられるか!

 

池田「バカはお前だろ!」

 

なんでや!なんで俺がバカなんだ!

 

池田「ただ無機質に10km走る、あるいはランチ休憩付きの10kmどっちがいいと思ってやがる」

 

耕平「時と場合を考えろww何匠に誘い込もうとしてるんだよブラック企業の社長かよw」

ブラック企業の社員になる男のくせに・・・。

断じて許されない。この成績を上げる機会を逃してはならない。ただでさえこいつらのせいで授業態度の評価が悪いのにさらに実技での評価まで落とされるなんてごめんだ。

 

友一「もう、最後のマラソン大会なんだよ。記録に残したいの?それとも、記憶に残したいの?」

少し悲しそうな表情をする友一。違うんだ。輝かしい記録なんてものはいらない。俺はただ、成績のために走っているんだ。そりゃあ思い出だってほしいさ。でも、それ以上に、いや、思い出を作る機会を失ってでも欲しいものがあるんだ・・・。

 

―何かを手に入れるためには何かを失わなければならない―

 

池田「いいか、少し考えてみろ。長距離終わったら次はサッカーだぞ。もうお前の独壇場だ」

 

りょうが「それに聞いたところによればマラソンの加点反映されるのは少しだけらしいぞ」

 

なんとか説得しようとする彼ら。確かに、言われてみれば早いだけで良い評価が付くのはおかしい。少しは加点されるだろうが、最も大切な部分はそこではない。

 

耕平「ところで泰一は?あいつ最近遊び誘っても断られるし」

 

りょうが「忙しいんだろ」

 

耕平「そうか。よし、わかった。今回だけだからな」

 

こうしていつものように説得をされるのであった。

 

友一「あぶねー!俺だけわかるロシアンおにぎりが無駄になるところだった!」

 

池田りょうが「おい!!」

 

その”当たり”おにぎりを食べることになるとはしらず、呑気な顔をしている俺であった。

 

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