僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

カップ麺が出来上がる3分間

やかんいっぱいに入れたお湯が、音を鳴らし沸騰を知らせる。友一が立ち上がり、キッチンへ向かう。慣れた手つきキッチンの電気をつけ、慣れた手つきで火を消す音が聞こえる。ここは俺の家だ。
腹が減ったと言うことで、うちに向かってきている友一に食べるものを買ってくるよう頼んだところ、カップ麺を買ってきた。そのままキッチンへ行き、友一自ら料理をすると言い出した。料理と言ってもお湯を沸かすだけだが。

友一「みんなお湯の量は線より上派?それとも下派?」

耕平「なんだそれ」

線の部分までお湯を入れるのが普通のはずだ。そのための線ではないか。りょうがを見ると悩んでいる。恐らく俺と同じく、友一の謎の言動に惑わされているのだろう。

りょうが「今日に限っては…上だな」

耕平「迷ってただけかい」

友一「りょーかい!池田は?」

池田「いつもので」

耕平「いつものってなんだ」

友一「りょーかい!上ね!」

耕平「いつも上なのか」

友一「耕平は?」

お湯の量を変えることにより、味の濃さを調節しているのだろうか。まぁわからなくはない発想だ。だが俺はそんな冒険をする男ではない。自分で調節するならまだしも、友一だ。あの友一だ。うどんを作るのに麺つゆを入れずに塩胡椒で味付けをする友一だ。

耕平「俺は線のところまでで頼む」

友一「だから上なの?下なの?」

耕平「いや、上とか下とかじゃなくて線のところぴったしで頼む」

友一「そんな難しいことできないよ!」

神経質なのに不器用だな。そんなきっちりやる必要ないだろ。

耕平「じゃあ、気持ち下で…」

友一「りょーかい!!」

元気よく返事をし、お湯を入れ始める。池田とりょうがは将棋を打っている。圧倒的な実力差であるために、池田は飛車角落ちで相手をしているようだ。
リビングへ戻ってきた友一が3分測り始める。

耕平「なに買ってきたの?」

友一「カップ麺だよ!」

耕平「知ってるわ。カップ麺のなにを買ってきたのかって聞いたんだよ」

友一「それはお楽しみだよ!」

カップ麺の時点でそんな楽しみねーよ。将棋の盤面を見ると、さっきまで飛車角で攻め込んでいたはずのりょうがの飛車角はすでに池田の持ち駒になっているようだ。これは池田の腕が凄いのではなく、りょうがの腕が異常なだけだ。

りょうが「お前藤井に勝てそうだな」

池田「まぁいい勝負はできるだろうな」

耕平「いや無理だろ」

りょうが「機会があったら手合わせ願えよ」

 

池田「そうだな」

 

耕平「いやねーよ」

 

カップ麺が完成する3分の間に、りょうがと池田は夢のまた夢の話をしている。

 

池田「そう言えば最近あいつテレビで見ないな」

 

りょうが「確かに」

 

耕平「いや引っ張りだこだろうが」

 

りょうが「お前さっきから誰と勘違いしてるんだ?」

 

何を言っているのかわからない。だが俺と同じようにりょうがと池田も少し困惑しているような表情をしている。

 

耕平「誰って、藤井聡太だろ?将棋界の藤井と言えば聡太しかおらんだろ」

 

池田「アホか。藤井と言えば隆だろ」

 

耕平「隆の方かよwなんで将棋打ってる最中に隆出てくるんだよw」

 

将棋をしながら藤井と言えば100人中97人は藤井聡太を思い浮かべるであろう。りょうがも当然のように、藤井隆を想像していたような顔をしている。

 

りょうが「友一、お前は今の、どっちの藤井を想像した?」

 

顎に手を当て、考える。考える必要のない質問ではあるが、何故か一生懸命に考えている。そして閃いたように、指を立てて言う。

 

友一「仮面ライダーの人!」

 

耕平「お前それ藤岡弘じゃねーか」

 

3分経ったようで、友一の携帯が鳴る。一人の3分と、みんなでいる時の3分では断然後者のが早く感じる。みんなで立ち上がり、キッチンへ向かう。

 

耕平「てかお湯の量で味そんなに変わる?」

 

りょうが「カップ麺っつーのは在り来りな食事だろ。少しの工夫のうちの1つだ」

 

耕平「そんなもんか」

 

確かにりょうがの言うとおり、在り来りな食事である。それ故、お湯の量を調節したり、あるいは調味料を加えたり、自分に合った味を作り出すという楽しみもあるのかもしれない。食事というのは楽しまなければ意味がないからな。

お湯の量を気持ち少なめに頼んであるため、濃い味なのかな。そんなことを思いつつ、キッチンへ入る。

 

友一「喧嘩にならないように同じの買って来たからね!」

 

りょうが「その程度で喧嘩する歳じゃねーわw」

 

さて、お昼ごはんだ。

 

友一「右からりょうが、池田、耕平、俺のだからね!」

 

一同「ってペヤングやん」