僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

箱の中身は・・・

とあるネトゲをやっていた時の話。スカイプを繋げて翔平、泰一、友一とプレーをする。先に俺と翔平が始め、あとから友一と泰一が始めた。俺も翔平もレベルはかなり高く、装備もそれなりに揃っていたのでまったりとプレイをしていた。それに対し、友一と泰一はとにかく俺らに追いつくために、ひたすらレベル上げを行っていた。

その甲斐あってか、レベルはほとんど追いついた。しかしまだまだ楽しみどころと言うか、戦闘以外の楽しみを知っていなかった。装備もガタガタだ。

 

話は遡り、少し前になる。

 

翔平「ねえ耕平。たまには箱作ろうよ」

 

耕平「おお、いいね」

 

泰一「箱って何だ」

 

この箱、モンスターからドロップするアイテムを何種類か集め、作成することができる。その中身は、それなりに高く売れるアイテムから、何もドロップしないただただ強いだけのモンスターまで、何種類かある。

 

友一「いいね!作ろうよ!」

 

みんな同意の元、その箱を作ることになった。6種類ほどのアイテムを集める。それぞれ分担して集めるが、ドロップ率が悪いアイテムばかりで中々手間取った。それでも黙々とアイテムを集め、無事その箱を4つ作ることができた。

 

翔平「じゃあ今日はもう遅いし、明日開けよう」

 

こうして、俺たちは当日を迎えた。

 

翔平「じゃあまずMAPを移動するよ」

 

人気のない狩場へ移動する。仮に、レアなアイテムをドロップする敵が出てきた時、1番ダメージを与えた人にアイテムがドロップする。もしも俺や翔平よりも攻撃力が高いプレイヤーが来たら、奪われる可能性がある。もちろん、暗黙の了解でそのような行為は禁止されていたが、中には好んで権利を奪うプレイヤーもいる。色々な人がいるから、ネトゲは楽しいのだがな。

 

場所を移動していると、1人のプレーヤーがモンスターに回復魔法を放っている。

 

友一「この人何してるの?バカなの?」

 

そのモンスターはこのフィールドでは出現しないモンスターだった。

 

翔平「MPKってやつ。モンスター使ってプレイヤーを倒す」

 

そのプレイヤーはモンスターを召喚する課金アイテムを使い、そのフィールドよりも遥かに高いレベルのMAPに出現するモンスターを召喚していた。

 

友一「そんなことして意味あるの?」

 

耕平「このゲームBOT多いだろ?そいつら狙ってるんだよ」

 

運営の監視が行き届いていないからか、あるいは放置しているからか、BOTが非常に多い。BOTというのはロボットの略で、自動で敵を狩り、自動でアイテムを拾う。今時の言葉で言えばチートの類だ。自動で敵を狩り、ドロップしたアイテムを売り、ゲーム内通貨をリアルマネーに変えるRMTリアルマネートレード)業者だ。

逆から言うと、現金さえ払えばゲーム内通貨が買えるということ。このゲームでは不正行為として禁止されている。

 

泰一「邪魔な奴らを処理しているのか。なんていい人なんだ」

 

耕平「デスペナ狙いだよ」

 

このプレイヤーの狙いは、デスペナルティだ。BOTは自動で狩りをするために、敵がいれば攻撃する仕組みになっている。デスペナルティというのは死んだ時の代償。このゲームでは経験値が30%とランダムで装備していない装備を落とす仕様になっている。最近のネトゲではダンジョンに入るとクリア報酬で装備が手に入るゲームが多いが、このゲームは普通の雑魚敵でも一定確率で装備をドロップする。

要は、BOTが何の苦労もなく手に入れた装備をBOTよりも強いモンスターに倒させ、デスペナで落としたアイテムを拾うという、何の苦労もない作業だ。

 

友一「ふーん。賢いね」

 

翔平「お前よりはな。普通に高額なものを狙ったほうが賢い場合もある」

 

こうして俺たちはそのプレイヤーから離れる。離れ際に、足の早くなる魔法をかけてもらい、お礼をする。

 

召喚されたモンスターがレベルアップの効果音とともにHPゲージが戻ったが、気のせいだろう。モンスターがレベルアップするなんてゲームを俺は知らない。

 

翔平「このへんでいいでしょ」

 

耕平「そうだな」

 

さぁ楽しみはこれからだ。

 

泰一「俺から開けるよ」

 

友一「いいやつ出してくれよ!それで俺の装備を揃える!」

 

翔平「なんでお前の何だよw」

 

泰一が箱を開ける。否。

 

耕平「大外れにも程があるって」

 

1番のハズレ、ゲーム内で最強の敵が召喚された。ちなみにこいつは何もドロップしないモンスターだ。

しかしすぐに切り替え、戦闘態勢に入る。

強いとは言え、現段階で俺や翔平はソロで討伐できないモンスターはいない。

 

翔平「2人で頑張って倒してみなw」

 

友一「よし!行くぞ泰一!」

 

こうして泰一と友一は戦闘に入る。攻撃も必中するし、被ダメも少ない。なにより泰一は回復魔法を使える。心配なさそうだ。

 

そうこうしているとBOTが集まってくる。最強の敵を倒せるわけもなく、1発の攻撃で死んでいく。

 

翔平「俺らも小遣い稼ぐか」

 

そう言い、翔平はBOTが落としたアイテムを拾い始める。倒されると、街に戻されるカウントダウンが始まる。その間に蘇生されればデスペナは受けない。復活の方法は何種類かあり、課金アイテムであったり、普通にNPCから買えるものもある。NPCから購入できるものは、使うとHPが1の状態で復活する。課金アイテムは満タンの状態で復活できる。もちろんBOTに使うわけもない。

 

敵のHPを半分ほど減らしたところで、運営の酷さが際立つ。BOTの数が尋常じゃない。20体は集まっている。しかしBOTの攻撃は当たりもせず、ただ虚しく死んでいくだけだ。

 

翔平「結構アイテム落とすね。ポーション代にはなるんじゃない?」

 

耕平「そうだな」

 

HPが2割を切ったところで、レベルアップの効果音が鳴り響く。

 

友一「あれ?こいつHP回復してるよ!?」

 

耕平「は?ってほんとだ」

 

先程まで残りわずかのHPだった敵が全回復している。

 

友一「ちょっと泰一!さっきの人みたいに回復したでしょ!」

 

泰一「してないぞ」

 

翔平「したとしてもいきなり満タンってありえないでしょ」

 

文句を言いつつも、攻撃の手を止めない。しかし不自然な話だ。このゲームではレベルが上がるとHP,MP共に全回復する。敵もレベルアップしたとしか考えれない。

 

HPを半分ほど削ったところで、再びレベルアップの効果音と共に敵のHPが全回復する。

 

間違いない。こいつレベル上がってやがる。

 

友一「ちょっとまた!?何こいつゾンビじゃん!」

 

泰一「こーちゃんまずい。攻撃力上がってる」

 

HPが回復しただけではない。攻撃力、防御力も上がっている。

 

翔平「やばいよ耕平俺らも殴ろう」

 

こうして4人で敵を攻撃し始める。いや、正確には24人だ。やつらは死んで街に戻されても、また戻ってくる仕組みのようだ。

 

耕平「BOTなんとかしないと終わんねえよ」

 

翔平「またレベル上がったらやばいよwwww」

 

友一「強いって!2回食らったら死んじゃう!」

 

耕平「お前ら倒されたら経験値やばそうだから下がってろ」

 

と、言っている間に泰一がやられる。そしてレベルアップの効果音。

 

翔平「友一、泰一蘇生させて」

 

耕平「泰一そんで攻撃力あげる魔法使え!」

 

もう必死だ。俺も翔平も必死である。BOTをなんとかしなければレベルが上がり続けてしまう。かと言ってBOTは街に戻されてもすぐにここへ戻ってくる。一体どういう仕組なのか。

 

友一「・・・いいこと考えた!!」

 

翔平「いいこと?BOTなんとかしないと何にもならないよ」

 

友一「一か八かだけど・・・俺にかけてよ!」

 

翔平「わかった。なんとかしてみてくれ」

 

そう言うと友一は画面外に消えていく。スカイプから、よし!成功!という声がする。

 

友一「今行く!」

 

画面内に友一が戻ってくる。

 

 

そして友一の後を追うようにゲーム内で最強の敵がこっちへくる。

 

耕平翔平「何やってんの!?」

 

友一「箱を開けたのさ!こうすればレベル上がりにくくなるでしょ!?」

 

翔平「そいつも上がったらどうすんだよwww」

 

友一「・・・そっか!!」

 

耕平「そっかじゃねーし・・・」

 

翔平「もう無理だ。俺の攻撃も1しか喰らわないよ」

 

耕平「帰るか・・・」

 

泰一「そうしよう」

 

先に友一と泰一を町に戻らせ、確認できたところで俺と翔平も戻る。

 

 

各々が晩御飯やらお風呂やらを済ませ、再びスカイプを繋げログインをする。

 

友一「それにしても怖かったね」

 

耕平「まさか敵もレベルが上がるなんて想像してなかったしな」

 

町の中心に大勢の人が集まっている。どの人も俺や翔平よりもレベルが高く、装備も化け物レベルの人たちだ。

1人のプレイヤーが全体チャットで話す。

 

「それでは今より、化物4匹の討伐へ向かいます!みんな頑張ろう!」

 

「うぇーい!!」

 

耕平「あぁ、そういや俺も泰一と友一と中身同じだった」

 

翔平「俺も」

 

友一「開けてきたのかよwww」