僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

幾多の試練を乗り越えた、その先にあるもの

学校から帰宅し、早々にベッドへ入る。携帯を見ると、翔平から心配のメールが届いている。無事に帰れたか、と。

夜になるに連れ、体が熱を持っていくのがわかる。薬を飲み眠った。夜中に目が覚める。頭痛、腹痛、吐き気、全ての力を手に入れた俺は無敵状態であった。何度目の目覚めだろうか。目を開けると、日はすでに昇っていた。体が自然と普段の起床の時間に起きたのだ。

だるい体を起こしリビングへ降りる。未だにすべての力を手にしている俺の無敵状態は変わらない。唯一、欠点があるとすればその力全てを操れないということだ。

 

母親「おはよう」

 

耕平「おう」

 

俺の朝食が用意されている。俺だけの朝食が、用意されている。

 

母親「お母さん、もう寝るから」

 

そう言い、だるそうに階段を上がる。だが俺は母親に頼まなければならないことがある。それは学校へ欠席をするという連絡を入れてもらうということ。俺の高校では保護者からの連絡無しでの欠席は許されていない。俺は母親を呼び止めようとした。しかし、呼び止めることができなかった。それはテーブルの上に置かれた弁当を見てしまったからだ。その代わりに質問をする。

 

耕平「・・・親父は?」

 

母親「休むって」

 

耕平「・・・妹は?」

 

母親「休むって」

 

耕平「・・・俺は?」

 

母親「行きなさい」

 

耕平「・・・俺は?」

 

母親「行きなさい」

 

 

遡ること数日前、俺が早退した前の日である。妹が早退をし、病院へ行った。そして医師からノロウイルスと診断された。ノロウイルス、少し前にホタテを食べたことを思い出した。他人事だと思っていたが、妹が病院へ行った次の日、俺の体にも異変が起きた。幸いにも、校内での体調は最悪と言うほどではなく、熱が39度に達し、フラフラし始めたのは家についてからである。

言うまでもなく、病院へ行くまでもなく、俺は自分がノロウイルスになっていることを自覚した。

 

耕平「行きなさいって・・・」

 

あまりのだるさに言葉が出てこない。こんな親いるだろうか。

 

こんな親・・・。

 

―体調が悪いというにも関わらず、早起きをし、息子の弁当を作る親。

 

耕平「行ってきます」

 

期待に答えるしかない。行くしかないんだ。これは俺に与えられた試練なのだ。もはや休む理由など必要ないため、熱もはからず登校する。行きの電車内でりょうがや池田と合流するも会話が頭に入ってこない。翔平や泰一は昨日から体調が悪いと言っていた俺に気を利かせ、そして心配をしてくれている。

学校へ着くと、早々に担任の先生が心配をしてくれる。

 

担任「耕平大丈夫か」

 

耕平「はい、なんとか」

 

担任「病院行ったのか?」

 

耕平「行ってないですけど、家族みんなノロなんで多分俺もノロです」

 

担任「いや帰れよ」

 

耕平「・・・はい?」

 

担任「いや、帰れよ」

 

耕平「・・・はい?」

 

担任「出席停止だわ」

 

そう言い電車の時間を調べる。まだ少し時間があるから保健室で休んでこいと言われ、保健室へ向かう。することもないので、熱をはかる。音の鳴った体温計を見ると、39の数字。俺は目を瞑り、自分の男気に酔いしれる。

行きよりは幾分か体調がマシになり、スムーズに帰れた。地獄の坂も気合で登った。家につき、原付きのエンジンをかけ病院へ向かう。わかっていた診断を受ける。薬をもらい、家に帰って眠りにつく。目が覚めると驚くほどに体調は回復していた。俺だけでなく家族みんな元気になっている。薬というものはすごい。

夕方、りょうがから電話がかかってくる。

 

耕平「もしもし?」

 

りょうが「おう。お前明日遠足だから来いよ」

 

耕平「いや、頭おかしいんじゃねーの?」

 

友一「もしもし!?耕平!?明日遠足だから来てよ!?」

 

耕平「あのさ、普通の授業ならまだしもノロの俺が遠足とか行くわけねーだろアホか」

 

こいつらはわかっていない。ノロウイルスの恐ろしさを。

 

池田「どうせ今頃薬飲んで体調回復してんだろ?」

 

耕平「・・・」

 

池田「明日英語のノート見せてやるよ」

 

耕平「・・・」

 

こいつは変なところで察しが良い。そして頭も良い。遠足でワクワクするような俺ではないことを知っている。俺のエサを知っている。だが俺には幼馴染の翔平がいる。同じ悲しみ、喜びを1番共有してきた仲だ。今日だって心配をしてくれた。泰一は使い物にならないが、翔平なら彼らをなんとかしてくれるだろう。英語のノートだって翔平に見せてもらえばいい。

 

翔平「電車の時間メールしとくね!」

 

耕平「って裏切り早くね!?」

 

 

眩しい日差しに目が覚める。まだパジャマ姿の妹と親父、そしてエプロンを巻く母親とリビングで朝食をとる。服装以外はいつも通りだ。

 

耕平「あれ、親父仕事は?」

 

親父「有給ですからー!残念!」

 

耕平「お前は学校行かないの?」

 

妹「出席停止だから無理に行く必要はない。家で本読んでたほうが懸命だ」

 

耕平「俺は?」

 

母親「行きなさい」

 

耕平「俺は?」

 

母親「行きなさい」

 

こんな親いるだろうか。

 

顔と性格以外は似ていない。もしかしたら本当の親ではないのかもしれない。なぁ俺の本当の親を教えてくれないか波田陽区

 

耕平「行ってきます」

 

休む理由を探すべく、熱をはかるも、圧倒的なまでに平熱であった。だが薬のおかげもあり、少しだるいが、派手に動かず安静にしていれば支障はなさそうだ。天気は生憎の雨。いや、この時ばかりは恵みの雨だ。もしかしたら中止で普通に授業って可能性もある。そっちのほうがありがたい。そもそも出席停止なのに行っていいのだろうか。行きの電車内でりょうがや池田と合流する。今日は会話が頭に入ってくる。何を言っているのかは分からないが、いつも通りだ。

学校へ着くと、何やら教室内が騒がしい。遠足中止だろうか。教室へ入ると、体操着に着替えた男子達が目を輝かせ、俺を見る。

 

「来てくれると信じてたぜ!」

 

何の話かはわからないが、期待されているようだ。満更でもない顔をする。後ろからやってきたりょうがが俺の肩に手を回し、大きな声で言う。

 

りょうが「よし!サッカー部部長も来たし、球技大会サッカーは優勝狙いに行くぞ!!」

 

一同「おー!!」

 

耕平「いや死ぬわ」

 

幾多の試練を乗り越えた、その先にあるもの。それは幸せや安定などではない。俺はそれに気づいてしまったのが早すぎた。

 

その先にあるもの、それは試練だ。