僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

スルーパス

今更感があるが、日本がワールド杯の切符を手にした。最近、サッカーに対する熱はほとんどないがそれでも嬉しい。選手はサポーターの応援あってこそと言うが、そんな事はない。国民の期待を背負い、プレッシャーの中掴んだ切符。
サッカーっつーのは、と語れば止まらなくなる。一言、チームプレーが大切とだけ。これはサッカーだけではない、いやスポーツに限った話ではない。仕事やもちろん、私生活でも大切なものだ。

集まる日程が決まり、具体的なことを話すべくラインの通話機能を使う。便利になったものである。ちょっと前はわざわざパソコンの電源を入れてスカイプを繋いでいた。
もちろん、言うまでもなく今回の立案者は池田である。言うならば監督だ。いつもの流れなので、大体の話の内容は予想がつく。肉か魚、どっちを食べに行くかだ。

耕平「ういー」

メンバーはすでに集まっていたようで、通話をかけて来た池田の他に、りょうがと友一の名前がある。

池田「んじゃ早速始めますか」

友一「ごめんその前にちょっといいかな」

池田「どうした」

本題に入る前に友一が語り出す。彼は俺らのストライカーだ。

友一「最近ちょっと便秘気味なんだけどさ、なんかオススメのいきみ方ある?」

耕平「は?」

序盤からかっ飛ばしてくる友一に俺たちはついていけない。

友一「いやだからさ、」

再び同じことを繰り返す。時間も深夜であり、さっさと話を済ませ寝たいところであるが、こいつは何を言ってるのだろうか。

耕平「いきみ方聞くのはおかしくね?食事とかその辺聞くのが普通でしょ」

そこまで言ったところで当たり前のことに気づく。こいつは普通ではない。

池田「早く進めたいから耕平なんか答えろ」

俺よりも先に気づいていた池田がめんどくさそうに俺に言う。

耕平「優しいなお前。えー、オススメって言われてもなぁ・・・ふんっ!とか?」

りょうが「バカじゃねえの」

耕平「めっちゃノーマルないきみ方だろうが。バカとか心外にも程があるわ」

友一「りょうがはなんかオススメある?」

りょうが「オススメか・・・俺はこれを必殺技って言ってるんだけどさ」

耕平「ほらスイッチ入っちゃったじゃん」

友一「うん・・・」

りょうが「ウルトラソウッ!ハイッ!って言ってるよ」

耕平「なんで2人いるんだよ。どっちだよどっちでいきむんだよ」

池田「マジ?俺もそれ使ってるんだけど」

耕平「嘘つくな乗るな!」

友一「わかった!使ってみる!できればなんかあった時のためにもう1つ教えて欲しい」

耕平「なんかあった時ってなんだよ」

池田からの、日にちは決まったから何するか話そうぜ、と言う問いかけで通話をしているのに、なぜいきみ方の話をしているのだろうか。

池田「んじゃ俺から1つ」

友一「うん・・・!」

池田「どっこいしょー!どっこいしょ!×2ソーランソーラン!×2」

耕平「どこでいきむんだよ・・・」

池田「高校の時、俺が用足してる時に隣の人と使ったコンボ技」

耕平「なるほど。交互にってことか」

池田「そう言うこと」

耕平「って納得してる場合か。さっさと話進めろよ!」

友一「あぁ!ごめん!なんで便秘を疑ったかって言うとね」

耕平「そっちじゃねーよ。知るかよお前の便秘なんて」

話を戻すぞ、と池田が言う。戻すもなにも最初からいきみ方の話である。

池田「俺は今回、焼肉がいいと思うんだけど」

りょうが「賛成ー!」

耕平「良いよ」

友一「わかった!」

池田「すんなり決まったな」

わずか5秒ほどで本題は決まった。あとは店や時間を決めるだけであるが、ストライカーは自分の意思を伝えたいようで再び話が逸れる。いや、戻る。

友一「それでね、用を足そうと思ってトイレに行ったんだけど中々出なくてさ、あれ、もしかしてこれ便秘?ってなったの」

池田「ほうほう」

友一「出そうとしてるんだけど、中でなんか抵抗してて出てこないの」

池田「抵抗?どうやって?」

友一「拳で」

耕平「お前それ言いたかっただけだろ」

友一「それでいきみ方を聞いたってわけなの」

今1番ホットなコブシデくんのモノマネをする。本当にそれが言いたいだけだったようで、どこの店に行くのか話が戻る。
本題とは違う、ズレた話をするのは日常茶飯事であり、そんな仲間とともに時間を過ごしている。こうなる事は予想できたし、それが俺らの日常である。

友一「牛角にしようよ!」

池田「牛角ってお前な…耕平なんか言ってやれ」

池田からパスをもらう。ゴールはもう目の前にあり、あとはシュートを打つだけだ。いや、俺はストライカーではない。パスを欲しそうな顔をしている友一の顔が想像できる。

耕平「牛角って発想は少し子供っぽいな。何年生だよ」

我ながら良いパスだ。期待を込めたパスを、友一が受け取る。コブシデくんに関連したパス、言うならばキーパーを交わしてパスをしたようなもの。あとは無人のゴールにシュートを打つだけだ。

友一「早生まれだから少しややこしいけど今年24だよ!てかみんな同い年じゃん!バカだね!」

りょうが池田「ちげーだろ!」