僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

君の知らない物語

ちょっと古いけど"君の知らない物語"って歌がある。supercellのファーストシングルかな?この曲出す前から好きで、俺の中では今話題の米津とかまふまふの、先駆者って感じがする。知らない人少ないと思うけど、もし聴いたことないようなら是非1度聴いてほしいものだ。

久しぶりに焼肉へやってきた。食べ放題のプランで最初に店員から軽い説明を受ける。時間は何分で、ラストオーダーはいつで、食べ切れなかったやつは別払いなので注意してくださいと。

 

池田「毎回思うんだけど、食べ切れないことなんてあるの?」

りょうが「あるから注意されてんだろ」

池田「だってもう食べれないところで追加注文しなくね?」

耕平「食べ切れなくても注文するバカいるんじゃねーの」

まだ肉すら届いていないのに箸を持って待機する友一を見て池田は納得したようだ。店員を呼び、注文をする。
インターバルが長いとたくさん食べれないために、最初にがっつり頼むのが池田流。どうせ時間いっぱいまで食えないんだからと池田は言うが、意外と大食いの俺は最後までペースを落とさずに食べている。
そして肉を焼いては食べ、注文をする。届いたら焼いて食べ、また注文。これを無言でひたすら繰り返す。ちなみに俺はホルモンが1番好き。いつハマったのか忘れたけど、だいたいホルモン食ってる。そんでりょうがは毎回サラダを悩んでる。サラダを取り皿に分けてるそこら辺の女より女子力の高い池田を見ながら、友一は、

友一「やっぱり牛タンは美味しいね!」

と、言いながらカルビを頬張る。もはや誰も何も言わない。

ラストオーダーまで残りわずかのところになると、もう箸を動かしているのは俺だけ。そして俺が満足し、伸びをすると締めのデザート。満足と言うよりは限界と言った方がいいな。ほんと、食べ放題は命がけだから。
ちなみに俺はデザートは食べない派。コーヒーだけ頼むよう言い、外へタバコを吸いに行く。お腹いっぱいの時に甘いものが食べたくなるってみんな言うけど正直よくわからない。まぁ、甘いもの自体あまり好まないし、冷たいもの食べるとお腹下すからそもそもデザートとか天敵だけどね。
席へ戻るとコーヒーだけ届いている。
高校生くらいの時にブラックが飲めるようになりたいと、りょうがと友一が練習していたのを思い出す。練習の甲斐あってか、飲めるようになったらしく、すっかり大人ぶってる。

店員「お待たせしましたー」

コーヒーが届いてから少し経つと、店員がデザートを持ってくる。池田がそれを受け取り、頼んだやつの前に置く。

店員「抹茶アイスと、」

りょうが「はいはい」

店員「杏仁豆腐2つと、」

友一「はいはい!」

池田「はーい」

店員「カレーですね」

耕平「ん??」

店員「カレーですね」

耕平「・・・」

カレーが目の前に置かれ、スパイシーな香りが漂ってくる。

耕平「おいお前ら」

嫌がらせをして楽しそうなわけでもなく、だからって憐れむわけでもなく、ただデザートを食べ始めている。

耕平「コーヒーにカレーはないだろ!」

そこじゃねーよ。良い匂いだからって食欲が増すわけない。先ほども言ったが俺はすでに限界である。

池田「いやさ、りょうがが頼めって言うから」

りょうが「だって友一が言うからさ」

 

友一「耕平が頼んでって言ったから!」

耕平「たらい回しすぎて俺のところまで来ちゃってるよ」

りょうが「んだよ、こんなのも食えねーのかよ」

耕平「・・・っち、なめやがって」

深呼吸をし、胃袋に語りかける。

耕平「(なぁ、頼みがあるんだ)」

胃袋「(どうした)」

耕平「(もう少しだけ、頑張ってくれないか)」

胃袋「(・・・)」

こいつらが何を考え仕掛けようと、俺はそれを乗り越えたい。俺のが上だということを教えてやれる良い機会だ。俺は生まれた時から共に歩んでいる胃袋に語りかける。協力してくれ。もう頼りになるのはお前しかいないんだ。

 

胃袋「(ごめん無理だわ)」

耕平「やっぱ無理だわ」

りょうが「なんだよ!」

池田「お前ならやれる」

耕平「おいどの口が言ってんだ」

友一「どんな時も諦めない、それが耕平だよ。俺は知ってる!高校の時女の子にブスって言って泣かしたことを俺は知ってるよ!」

耕平「記憶にないし、関係ないし、どの口が言うんだよ」

友一「どの口が言うって、それは女の子のセリフでしょ!?」

耕平「やかましいわ!」

食べ物を粗末にしてはいけない。ガキの頃から教わってきたことであるが、それだけでは拍車がかからない。あと一歩、何か俺の胃袋を奮い立たせるものが欲しい。

池田「よし、じゃあお前がそれ食べきれたら、ここは俺が奢ってやるよ」

りょうが「男前きたー!」

池田「もちろん、お前らの分も出してやる」

りょうがと友一の目の色が変わる。いや、お前らが目の色変えてどうするんだよ。だが男たるもの、仕掛けられた勝負は買わねばならぬ。

胃袋「(ギャフンと言わせてやろうぜ)」

池田はまだ俺の恐ろしさを知っていない。りょうがと友一のためではない。池田と俺の勝負。いや、胃袋とカレーとの勝負だ。

再び深呼吸をし、手を合わせる。

耕平「いただきます」

少しニヤニヤする池田を見て、俺もニヤつく。残念だが、これくらい本気の本気で立ち向かえば余裕だぜ。
目を落とし、そこで初めて池田がニヤついた理由がわかった。

耕平「・・・箸で食えってことかよ」

会計を済ませ、苦しそうな俺に向かい、最初から奢るつもりでいたと言う池田に俺は1本取られたことに気づく。この物語を知らないりょうがと友一を見て、あぁ、これが"君の知らない物語"なのか、そう思う夜であった。