僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

少しの親切が大きな幸せになる

猛烈な尿意が押し寄せてきた。と、まじめな顔でりょうがが言う。仕方がないのでコンビニへ寄る。特に買うものもないので、雑誌コーナーで適当な雑誌を手に取る。池田も適当に雑誌を手に取りパラパラとめくっている。雑誌なんて普段読まないので、ページをめくるだけで、実際は外を走る車を眺めている。

そんな俺に1人の少年が話しかけてきた。

 

「ねえねえ」

 

馴れ馴れしく話しかけてくる少年を見る。見覚えのない少年だ。そもそも出先のため知り合いなんている土地ではない。その少年は俺よりも少し年下くらいに見えた。ただ、雰囲気で何となく障碍者ってことだけはわかった。

 

耕平「なんだ」

 

池田「いやお前何威嚇してんだよ」

 

耕平「してねーよ」

 

池田「いや目つき悪すぎだって!っていつもじゃねーか!」

 

耕平「やかましい!」

 

その少年は何か俺に聞きたいらしい。

 

耕平「で、なに?」

 

少年「あのね、これの中身を知りたい」

 

少年が手に持っていたのはパチスロの雑誌だ。パチスロの雑誌の付録のDVDの内容が知りたいらしい。

 

耕平「貸してごらん」

 

ディスクを包んである紙にはしっかりと内容が書いてあった。

 

耕平「ここに名前と機種名が書いてあるじゃん?この人たちがパチスロを打ってる動画が入ってるんだよ」

 

少年「うーん」

 

俺の説明では難しかったようで理解できていない。池田が横から簡潔に説明をする。

 

池田「パチスロの動画だよ」

 

少年「パチスロ?」

 

耕平「いやお前パチスロの雑誌持ってパチスロってワードに首傾げるなよ」

 

少年「あのさ、」

 

耕平「無視かい!」

 

俺を華麗に無視し、少年はパチスロの雑誌をパラパラとめくる。目的のページを見つけたようで、そこを俺に見せる。少年はそのページを指さし、言う。

 

少年「こんな動画は?」

 

少年が指をさしたページは、出会い系の広告のページであり、下着姿の女性の写真があった。

 

耕平「スケベかよ」

 

どうやら直球でツボに入ったらしく池田は声が出せないほどに爆笑している。なぜか俺まで恥ずかしくなってきたが、ここは正しい道へ少年を導いてやらねばならない。

 

耕平「いいか、これはエロ本ではない。お前が求めているものはな、こっちこい」

 

少年を手招きし、成人雑誌のコーナーへ案内する。

 

耕平「ここだ」

 

腹を抱えて池田もついてくる。

 

少年「どれがいい?」

 

耕平「知らねーよ」

 

少年「どれがいい?」

 

耕平「自分の好きなの選べよ」

 

少年「どれがいい?」

 

どうやら字が読めないのか、あるいは想像力が乏しいのか、選べないでいるようだ。

 

池田「選んでやれよ」

 

耕平「・・・恥ずかしいんだけど」

 

さほど種類のないエロ本をまじまじと眺める。そういえばエロ本なんて買ったことないな。適当に眺めていると、DVD付きのものを目にする。少年は最初、DVDの内容が気になると言っていた。つまり本当は映像が見たいのではないか。俺はDVD付きの雑誌を手に取り、少年に勧める。

 

耕平「これなんてどうだ?」

 

池田「出たロリコン!」

 

耕平「うるせえ!DVD付きのを選んでやったんだよ!」

 

少年「ロリコン?」

 

池田「こいつのあだ名だ」

 

耕平「何それ俺も初耳なんだけど」

 

少年は雑誌を手に取り、表紙を眺めている。

 

ニヤけながら。

 

耕平「だからスケベかよ・・・」

 

少年「いくら?」

 

池田「540円だな」

 

雑誌を一旦置き、マジックテープの財布を広げ、1000円札を取り出す。しかし表情は少し落ち込んでいる。

 

少年「あぁ・・・」

 

耕平「それ使っていいお金じゃないだろ」

 

少年「うん・・・」

 

少年は少し残念そうな表情でエロ本を元にあった場所に戻す。そんな様子を見て、俺も少し残念な気持ちになる。池田も同じくそんな顔をしている。

 

昔を思い出す。欲しいものが山ほどあった小学生の頃だ。俺は残念ながら甘やかされず育てられた。サッカーの練習の交通費はもらっていた。決して使ってはいけないお金だ。使ってしまえば練習に行けなくなってしまう。おそらくこの少年も、交通費、あるいは病院代。当時の俺が持っていた1000円と同じものだ。

 

池田「270円くらい、良いだろ」

 

俺に同意を求める。直接言わなくても、2人で買ってやろうと言いたいのはわかる。

 

耕平「・・・」

 

池田「270円で目の前の1人が幸せになれるなら安いだろ」

 

耕平「そうだな」

 

いつの間にかトイレから戻っていたりょうがも黙って見ている。

 

耕平「仕方ないな。いいか、絶対かーちゃんに見つからないようにしろよ」

 

少年「うん!」

 

少年にお金を渡し、嬉しそうな表情でエロ本をレジに持っていく。

 

スケベだ。

 

余分なお金を持たせない理由は心配だからっていうものかもしれない。それとも、厳しいのかもしれない。ただ、どちらにせよ、愛されている故の結果だ。少なくとも、大人になった俺はそう思っている。

 

俺たちの親切が良かったのかと言われればそれはわからない。だが俺は小学生の頃、泰一や翔平からお菓子をもらった時嬉しかった。そして今回、俺はあげる側になっただけだ。

 

コンビニを出て、少年に別れを告げる。

 

池田「・・・元気でな」

 

耕平「絶対かーちゃんにだけは見つかるなよ」

 

少年「ありがとう」

 

少年はルンルンで歩き始めた。そんな様子を眺めながら、りょうがが言う。

 

りょうが「良いことしたし、俺にもなんか良いことあるといいな!」

 

耕平「何そのあからさまな棚ぼた狙い」

 

池田「んじゃ行こうぜ」

 

遠ざかる少年が振り返り、大きく手を振っている。そして大きな声で別れを告げた。

 

少年「じゃあねー!!ロリコン!!」

 

耕平「俺のあだ名やん。っておい」

 

 

 ※ほんとにロリコンじゃないです。