僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

戦士

映画やアニメでよくある描写に対し、疑問を思ったことがある。鎧を纏った戦士が剣で斬られ、弓矢で貫かれ、馬に潰される。重いものを身に着け、身を守っているつもりだろうが、やられているではないか、と。ならば身軽さを優先して1撃でも多くダメージを与えるべく鎧を脱げばいいではないか、と。もちろんフィクションに対しツッコみたいだけで実際は致命傷を避けるだの重要な役割を持っているだろう。

 

高校1年の時、秋田君という同級生と仲良くなった。彼は俺の数少ない友達と呼べる存在で、3年間仲良くしてもらった。人間を2種類に分けるのならば、秋田君はりょうがや友一側の男だ。決して、俺側、つまり通常の人間ではなく少し変わった男だった。俺は彼のことばの言い回しや、物腰の柔らかさ、仲良くなった時に発言する常識外れのボケやツッコミに惹かれていた。

 

ある日、学校へ着くと俺と同じく秋田君と連んでいた池田が秋田君と話していた。その他数名で人だかりができている。

 

池田「おう。きたか」

 

耕平「おはよう。どうした」

 

適当な挨拶を交わし、池田のもとへ行くと秋田君が目をキラキラと輝かせ、俺にあるものを見せてきた。

 

秋田「見ろよ耕平!」

 

そう言い、俺の目の前に出してきたものは新しい携帯電話だった。当時はいわゆるガラケーというもので形や色、機能は様々なものがあった。秋田君の携帯電話は濃いピンク色で、2つ折りのものだった。

 

耕平「おお。携帯変えたのか」

 

秋田「おう!昨日変えたばかりだ」

 

秋田君から携帯を受け取り、適当に眺める。

 

秋田「それね、防水だしなおかつ耐久力もあって壊れにくいんだ」

 

耕平「へー」

 

確かに俺の携帯と少し違う。分厚くコーティングされているような感じだ。渡された携帯を秋田君に返そうとする。その時、池田がつぶやいた。

 

池田「良いのか?」

 

耕平「何がだ?」

 

池田「このままで良いのか?」

 

心当たりのない池田の問いかけに無言を貫く俺。

 

池田「今、秋田は確実にお前に勝負を仕掛けた」

 

秋田「そうなの?」

 

耕平「本人がそうなの?って言っちゃってるじゃん」

 

池田「耐久性に優れている、壊れにくい携帯に対し、お前はどういう存在だ」

 

耕平「俺は、んー・・・モテる?」

 

池田「ブスにだけだろ!!」

 

耕平「うるせえ!!」

 

少しの間沈黙が生まれる。池田の俺にとっては心当たりのない問いかけに、秋田君は心当たりがあったのだろうか小さい声で言う。

 

秋田「・・・いてみろよ・・・」

 

耕平「ん?」

 

秋田「耕平。この携帯を噛み砕いてみろよ!」

 

耕平「え、なんで」

 

俺はお前らにそんな風に思われているのか。自信満々の笑みを浮かべ、俺に挑戦を持ち掛ける。秋田君にとって何のメリットもないはずだ。昨日変えたばかりの新品の携帯。それを噛み砕けと言われても無理がある。仮に噛み砕こうとしても、傷がつく恐れがある。それに、いくら耐久性があると言ってもそれは携帯を使う上での話だ。落としたり、ぶつけたり、そういった事故に対しての耐久性であって、決して”噛み砕こうとしても無駄です!”なんてキャッチフレーズはつかない。メリットがないなんて言い方がぬるい。

 

デメリットしかない。

 

そして、

 

俺にメリットもない。

 

耕平「そう言われても、困るんだけど」

 

戸惑う俺に対し、池田が言う。

 

池田「お前は、俺たちのとって自慢の友だ。俺は、お前はどんなことでもこなせる人間だと思っている」

 

続けて、秋田君も言う。

 

秋田「どんな逆境でも乗り越えられる。俺たちはこれからもそんな耕平の背中を見ていたいんだ」

 

耕平「・・・お前ら」

 

今、俺の手の中に新品の鋼鉄の鎧を纏った戦士がいる。その戦士の主である秋田君は、この戦士とタイマンを張れと言っている。

 

耕平「・・・本当に良いのか?」

 

秋田「あぁ・・・信じてるぞ。友よ」

 

俺の中でいろいろな考えが生まれる。その考えの中で1つの結論に至る。俺も携帯も秋田君にとっては、高校生活を共に過ごす仲間である。秋田君がどう思っているかわからないが、少なくとも俺は秋田君とはずっと仲良くしたいと思っている。

 

それならば、友の期待に応えないわけにはいかない。それがどんな険しい道であっても。それが、友の大切なものに対してあっても。”友の期待に応える”

 

心を決めた俺の目つきは、池田や秋田君から見るとおそらく真剣そのもの。池田や秋田君も俺に期待している様子である。

 

秋田「メーカーのこだわりをぶち壊せ!」

 

池田「お前ならできる!」

 

耕平「・・・わかった」

 

手に持つ戦士を口に咥える。だが、これから戦う(噛み砕こうとする)戦士は、俺に敗北しても秋田君にとっては大切なもの。殺すわけにはいかない。控えめに端のほうを咥える。その代わり、渾身の力を込めるつもりだ。

 

池田「いけ!最強の防壁を突破だ!」

 

秋田「耕平の力を見せてやれ!」

 

顎に力を込める。固い。確かに耐久性は素晴らしい(携帯を噛み砕こうとしたことは今までないが)。目を瞑り、俺の頭の中で回想が流れる。秋田君の表情、池田の表情、俺にとっては大切な友2人の表情。

 

―負けるわけにはいかない。

 

否、バキッ、という音が出る。

 

耕平「・・・」

 

秋田「・・・」

 

池田「・・・」

 

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拳を天に突き上げる。やった。俺の勝ちだ。最強の防壁を突破した。

 

耕平「・・・」

 

秋田「・・・」

 

池田「・・・」

 

親指を立て、秋田君に向けて渾身の笑顔を放つ。俺は秋田君の友として、精一杯の力を発揮し、期待に応えた。池田はただ、頷く。何を思っているのかはわからない。ただ頷いている。

 

耕平「これが、俺の力だ」

 

最強の防壁を突破し、満足気な表情の俺に秋田君がシンプルな一言を放つ。

 

 

 

秋田「マジかよ」