僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

苔を極める者

先日、スマブラを買いに行った時の車内での話だ。俺は夏に、小中の時の友人Kと久しぶりに会った話をした。その出会いでKは想像を超えるものを俺に見せたのだった。

 

俺は久しぶりに会った友人Kを見て、老けたな、まずはそう思った。そして次に、妙に湿った髪の毛に目がいった。彼は海パンを穿いていた。恐らく、海へ行った帰りなのだろう。そう思い声をかけた。

 

耕平「久しぶりだなK」

 

K「耕平!元気そうだな!」

 

当たり障りのない、普通の会話だ。そんな感じの会話が続き、ついにKは衝撃的な発言をする。

 

K「これから海へ行くんだよ」

 

これから・・・?だと?

 

いや待て落ち着け。どう見てもKの髪は濡れている、いや湿っているではないか。カンカン照りの日差しの中、髪の毛を潤わせることなんて至難の業。一体どんなシャンプーを使っているのだろうか。そう疑問に思った。そして笑顔の彼は、さらに俺を驚かすものを見せたのだった。

 

そこまで話し、ルームミラー越しに翔平を見る。翔平は特に驚きもしない様子で、話し始める。

 

翔平「実は、俺も最近Kに会ったんだ」

 

耕平「そうだったのか」

 

翔平「あいつ、俺に信じられないものを見せてきやがった」

 

耕平「それってまさか・・・!」

 

ルームミラー越しに翔平を見るのをやめ、俺は直接後ろを向いた。唾を飲む音が聞こえるほどの緊張感の中、俺と翔平は声を合わせて言った。

 

耕平翔平「歯に苔が生えてた」

 

5秒ほど静まり返る車内。泰一の車から矢島美容室はまぐりボンバーだけが流れる。そして、5秒の間に俺が見たものは夢でも幻でもなかったと、実感が湧いてくる。

しかし残念なことに、俺は歯に苔が生えた人間を見たことがない。苔ではない何かが、苔に見えた可能性もある。例えばそうだな、ワカメとか。

 

耕平「見間違いの可能性はないか?」

 

翔平「2人で苔って合致しちゃったからな」

 

確かに。じゃあもう苔じゃん。俺はもう、Kのことを人間の姿をした苔としか思えなくなってしまった。ガラケースマホになったり、テレビが薄くなったり、そんな感じで苔が人の姿になれる時代なのかもしれない。寄生獣のように・・・。そう考えると、なんだか毎日が楽しくなってきた。

ただ、あまり家から出ない俺が、世の中のことを知らなすぎるだけかもしれない。俺は初心に戻り、スマホを出してすぐに検索を始める。ワードは『歯に苔が生えた』である。意外と出てくるが、”舌に苔が生えた”が目立つ。違うのだ。Kは歯に苔が生えていたのだ。そして決定的なのが色。検索結果では”白色から黄色”と出てくるが俺が見たものは緑だった。

次の可能性を考え、検索を進める。ワードは『口の中で苔を飼う方法』である。もしかしたら、海外とかでは当たり前の現象なのかもしれない。思い返せばKは少しタイ人みたいな顔をしていた。しかしヒットはしなかった。Kはタイ人みたいな顔であるが純粋な日本人だったことを思い出す。だが、俺はある記事で、苔の性質を知ることができた。

 

耕平「これは、もしかして」

 

俺はその記事を読み上げる。

 

―苔は湿度が大好きです。

 

翔平「髪の毛が湿っていた理由ってまさか」

 

耕平「あいつ、海へ行くのは遊びに行くためじゃない。苔のために体を湿らせるためだったんだ」

 

 

 そして次の記事にはこう記されていた。

―苔に根は存在しない。つまり栄養分や水分の吸収の仕方が、ほかの植物とは違う。

では、なにから栄養分や水分を吸収しているのか。

 

そう、”葉”と”茎”からである

 

翔平「それって!!歯茎!!」

 

耕平「間違いない。苔はKの歯茎を狙って栄養分を吸収している!」

 

翔平「Kの身長が160cmない理由は苔に栄養分を取られているからなのかもしれない」

 

そして俺たちはある結論に至った。

 

口の中で苔を飼うことは本当に可能なのではないか、と。でも湿度高すぎると無理って書いてあったから多分無理だからKの真似はしないでね。

 

あとKってイニシャルとかじゃなくて苔のKだよ。