僕らの現実非日常?

誰かこのロマンティックを止めてくれ

下手くそとかそういう問題じゃない

コンビニの駐車場から右折をしたい。そんなシチュエーションだった。助手席に乗る俺と、後ろに乗る友一に煽られながらドライブをしている。運転手の泰一は免許取り立てで、恐らく車を運転するのが1番楽しい時期だ。視界が少し悪く、左右から来る車が見えにくい。まだ車の形になれていないのか、ボンネットが道路に飛び出ないように慎重になっている模様。そして泰一は不器用の塊。何をするにしてもヘタクソだ。

 

耕平「おいおいどうした」

 

最低な男である。きっと良い奴なら、俺は左見るからお前は右だけ見てろ、とか協力プレーをしている。つっても、もう少し車を前に出してくれないと全然見えないんだけど。

 

泰一「見えないんだ・・・」

 

そりゃそうだ。一時停止の白線で止まり続けているようなものだ。本来ならそこで一時停止して、少しずつ進みながら、周りを確認するというものだ。まず歩道に出ろ。歩行者いないんだから平気だ。

ブレーキを足から離し、少しだけ進む。

 

友一「待って!!歩行者いないか確認した!?」

 

すぐに止まり、再び左右をキョロキョロと見る。

 

泰一「いないようだ」

 

再びブレーキから足を離し、少しだけ進む。

 

友一「待って!!本当にいない!?」

 

うるせーよ。今いなかったんだからいねーだろ。ウサイン・ボルトでもない限り、歩行者こねーよ。まぁボルトだったらいるかもしれないけど、さすがのボルトもここで全力疾走しないでしょ。買い物する時間より、右折に時間がかかっている。そんな状況であるが、急かしはしない。だが煽る。クソ野郎だな。

深呼吸をし、何を思ったのがサイドブレーキを引く。否、車を降りて、左右を見始める。

 

耕平「いや、アホやろ」

 

まるで道路を渡ろうとしている人のようだ。交通が途切れたのか、走って車に戻る。

 

泰一「今なら行けるかもしれないが、もしかしたらもう来てるかもしれない」

 

意味ないじゃん。何のために降りた?そりゃそうだよ。その時良くても今じゃなきゃ意味ないんだよ。今右折がしたいんだよ。

 

泰一「だが、1つ分かったことがある」

 

普通、車から降りて左右の確認なんてしない。普通じゃないことをした泰一は俺たちには未知の何かを発見したのかもしれない。

 

耕平「なんだ」

 

泰一「・・・チャンスはいつか、訪れる」

 

うん。そうかもね。

 

泰一「俺が車を降りている時、チャンスはすぐそこにあった」

 

うん。そうかもね。

 

友一「チャンスは自分でつかむものだよ。何もしない者にチャンスは与えられない!」

 

その通り!はい。

 

泰一「こーちゃんなら、どうする」

 

耕平「左右確認できるくらいまで車出す」

 

泰一「しかしそれは危険だ」

 

耕平「危険?」

 

泰一「歩行者が来たら危ない」

 

そこかよ。どれだけの障害物を意識してるんだよ。これ、右折できる?もしかして一生このまま?俺ここで死ぬの?そう思った。ありとあらゆる危険を予測し、右折をしようとしているけど、そんな人生楽しくないじゃん。

 

耕平「危険予測は大切なことだが、予測だけじゃなくて確認をしろ」

 

泰一「確認・・・。そうか、わかったぞ」

 

わかったぞじゃなくて見えるところまで車出しなよ。まず車セダンじゃないじゃん。タントじゃん。ボンネットそんなに飛び出てないじゃん。

次の瞬間、泰一は閃いたことを実行する。

 

泰一は真面目だ。真面目故に、”危険予測”というものを考えているのかもしれない。そして真面目故に、こんな俺と友一の命も大切にしてくれているのかもしれない。泰一を見習ったわけじゃないけど、俺も色々と予測した。そりゃ当然、事故に遭わないように考えているのだろう。その事故を起こすと自分自身も、そして俺や友一も怪我をする恐れがある。もし、そこまで考えているのなら、こんな不器用な男でもかっこいいじゃん。

 

ため息が出ちゃう。まったく、お前ってやつはみたいな。でも不器用なりに全力で右折をしようとする泰一を応援したいと思った。

 

その横で、泰一は全力で座席を前に出した。